ビジュアル系ロックバンド『PENICILLIN』のボーカリスト、HAKUEIさんが月に1回、好きなマンガについて好き放題に言いたい放題。HAKUEIさんはマンガ好きの多い音楽業界でも一目置かれるほどのコミック通で、自らもペンを持つ連載マンガ作家。「万単位」という膨大なコミックスの蔵書を持つマンガマニアのボーカリストが熱烈に大推薦する「名作ギャグマンガ」はこの5作品だ!!




●HAKUEI●
“ビジュアル系ロックバンド”というジャンルの礎を築いた、PENICILLINのボーカリストにしてサウンドクリエイター。マンガの他にも、ビール、クワガタ、納豆をこよなく愛する趣味人でもある。8月20日に最新シングル『 RAINBOW/SCREAM 』をリリース。11月26日にはニューアルバム『 Supernova 』のリリースも決定。全国十数カ所を巡る2009年のライブツアー『PENICILLIN TOUR 09’ Supernova』も発表となった。
PENICILLIN OFFICIAL WEBSITE

「早くも各方面で大好評をいただき、ありがとうございます。連載第二回目は、少年誌のギャグマンガについて振り返ります。“漫画”という言葉を辞書でひいてみると『大胆に省略・誇張して描き、笑いを誘いながら風刺や批評を込めた絵』(大辞林)という意味が一番最初に出てきます。つまり“笑いを誘う”というのは、本来すべてのマンガにとっての大前提であり、本道でもあるのです。その本道に特化したのがギャグマンガですが、ほとんどのギャグマンガ作家は代表作がひとつか多くてもふたつ。つまり作家は、命を削ってギャグを生み出しているのです。ちなみに今回も含めて、本連載のランキングはすべて“ 俺の思い入れ”によるものなのでクレーム等々は一切受け付けません(笑)。



■HAKUEIの「名作ギャグマンガ」BEST5■



『天才バカボン』:赤塚不二夫

1967年に週刊少年マガジンで連載開始。その後ライバル誌である週刊少年サンデーへ移籍したかと思えば、またマガジンに復帰し1976年まで連載。タイトルが「バカボン」なのに、明らかに主役はその父親という、日本人なら誰もが知るナンセンスギャグマンガ。文庫版全21巻。


「先日亡くなられましたが、赤塚不二夫さんは日本のギャグマンガの礎を築いた天才というほかありません。1960年代という日本のマンガ黎明期に、週刊少年マガジンで『天才バカボン』、ライバル誌の週刊少年サンデーで『もーれつア太郎』という名作を同時進行で週刊連載。さらに他の月刊誌にも数本のギャグマンガを連載するという殺人的なスケジュールをこなしているのに、才能がまったく枯渇しなかった。まさに“天才”という呼称がふさわしい。とりわけマンガ版バカボンの最終回のカッコ良さにはシビれました。最終回だというのに、オチはいつも通りのナンセンスギャグで普通に終わる。『いきなり最終回』という、いろいろなマンガの最終回ばかり集めた宝島社の書籍でご本人がそれについて語っているんですが、この理由がまた実にロック。「『天才バカボン』というマンガはギャグマンガ以上でも以下でもない。だから最終回もいつも通りのバカボンで終わりたかった」ということを言っている。クリエイターの鑑です。マガジンとサンデー間で『バカボン』に移籍を繰り返させたというハチャメチャな創作スタイルも含め、これほどのギャグマンガ家は後にも先にも出てこないに違いありません。合掌。」





『マカロニほうれん荘』:鴨川つばめ

1977〜1979年まで週刊少年チャンピオン誌上で連載され、当時の青少年から絶大な支持を集めた作品。ロックバンドのQUEENや特撮モノなど、当時の世相をモチーフとしたスピード感あふれるギャグと展開で一世を風靡した。旧作としては珍しく、コミックスとして現在まで30以上の版を重ねる。コミックス版全9巻。


「後の作家たちに影響を与える、現代ギャグマンガの手法の礎を築いた作品です。主人公の3人組は沖田総司(おきたそうじ)、膝方歳三(ひざかたとしぞう)、金藤日陽(きんどうにちよう)という新撰組をモチーフにしたキャラクター。現代では、キャラクターが様々な姿に変化したり、二等身になる手法は当然のように使われていますが、当時こうした過剰とも思える手法はほとんど使われていなかったはず。また、『パタリロ』の魔夜峰央さんもファンだったそうで、その自画像はサングラスといい菱形の口といい膝方歳三にそっくりですし、次に紹介する『3年奇面組』でキャラクターの名前をパロディ化するような手法はまさに『マカロニ〜』そのもの。鴨川つばめさん自身もさることながら、“マカロニチルドレン”とも言える作家たちがギャグマンガの発展に貢献したことを考えると、外してはならない傑作といえるでしょう。」





『3年奇面組』(含む『ハイスクール!奇面組』):新沢基栄

1980〜1982年(『3年奇面組』)、1982〜1987年(『ハイスクール!奇面組』)週刊少年ジャンプ誌上で連載。主人公・一堂零をはじめとした5人組の奇面組を中心に様々なキャラクターが活躍するギャグマンガ。アニメ化もされ、主題歌・エンディングテーマは当時人気だったおニャン子クラブのうしろゆびさされ組、うしろ髪ひかれ隊が担当。『3年奇面組』全6巻。『ハイスクール!奇面組』全20巻。


「『奇面組』はある種の青春グラフィティのような香りを漂わせながら、バカバカしさが行きすぎていて好きなんです。まずは登場するキャラクターの名前がそうですよね。主役グループである奇面組の名前は、一堂零(いちどうれい)、冷越豪(れいえつごう)、出瀬潔(しゅっせきよし)、大間仁(だいまじん)、物星大(ものほしだい)。他のキャラクターの名前もすべてギャグになっている上に、それぞれのキャラクターの設定がしっかりしている。サブキャラクターであるはずの不良の中須藤臣也(なかすどうおみや)という名前も秀逸です。さらに作中で、ギャグを全開にするときには、二等身キャラになったり、シリアスなタッチで描いたりと、『マカロニ〜』の手法が徹底的に整理されている印象があります。後の『スラムダンク』等でも見られるギャグ手法の進化に間違いなく一役買った快作です。」





『シェイプアップ乱』:徳弘正也

1983〜1985年まで週刊少年ジャンプにて連載。過激な下ネタとお色気を多用したギャグマンガ。世に「もっこり」というキーワードを知らしめた異色の名作。ウェイトトレーニングでダイエットに成功したマッチョで怪力の寿乱子と、スケベな居候浪人生の原宗一郎の関係を中心にストーリーが展開された。文庫版全8巻。


「この作品の登場は本当に衝撃的でした。画風も上品とは言えない上に、おっぱい、うんこなどのエログロ表現が満載。“メジャー少年誌にこんな作品を載せていいのか”というちょっとした後ろ暗さと、ジャンプコミックスという買いやすさのバランスも絶妙でした。なかには、結構泣かせるようないい話も出てくるところも好きでしたね。ただし、少年誌時代の徳弘作品は軸足をしっかりギャグに置いていて、アニメ化されたヒット作の『ジャングルの王者ターちゃん♥』にしても出てくる川の名前が“チンコの河”(笑)。そのまんまじゃないかというツッコミも何のその。“面白い”と確信したら全力でやり切る。週刊少年ジャンプの黄金期を支えた作品のひとつに挙げられるでしょう。」





『俺に血まなこ』:おおひなたごう

テレビ誌であるTV Bros.誌上で1994年に連載開始。続編の『さらば俺に血まなこ』『俺に血まなこの花』なども。シュールかつサイケデリックな作風で、現在に至るまで熱狂的ファンからの支持を集める。1巻完結のコミックスは絶版も、現在電子書籍として電子書店 パピレス にて入手可能。


「音楽専門誌『 FOOL’S MATE 』で4コママンガ『 すすめ!! とのさま 』を連載している、はくえい――つまりマンガ家としての俺(笑)――が目指しているのはある意味で、おおひなたごう的な世界観なんです。発想がシュールなだけでなく、着眼点がもの凄く細かい上に妙なリアリティがある。例えば、ハードボイルドな殺し屋の時間を止めるシーンがあるんですが、ニヒルな殺し屋がコートを着る瞬間にシャツがまくれないように手で袖先をつかんでいて、「お前、カッコつけてるけど、めくれるのがイヤなんだろう」という回とか。「そういう細かい描写が好きだ」と飲みの席で本人に伝えたら、「すげえうれしい!」といたく喜んでくれました。後に『B=PASS』という音楽専門誌で、誌上マンガ対決をさせていただくなど、思い入れとともに縁も深い作家さんです。」




トラックバックURL