親戚の子でもない子にせびられても、相場もわかりませんし、いちいちあげていたらキリもありません。大人の論理で切り抜けましょう。


●石原壮一郎●
言わずと知れた“大人力”の大家。『 大人力検定DX 』(文春文庫PLUS)『 30女という病 』(講談社)ほか著書多数。新刊『 大人の合コン力検定 』(ソフトバンク クリエイティブ)


■ビジネスマン危機一髪!! 石原壮一郎の「大人の切り抜け力」第39回■
「近所の子どもにお年玉をせびられたときの切り抜け力」



「そもそも、お年玉ってどういう意味か知っているかい?」

こうした大人らしいやり口で子どもを煙に巻くのも、ビジネスマンとしてのたしなみです。このやり口を使うには最低限の知識を仕入れておく必要がありますが、お年玉をせびるようなお子さまは長い話が決して得意ではないと思いこんでおきましょう。「お年玉というのは、昔、正月行事に『歳神(としがみ)』という神様を迎える祭りがあったんだ。そこにお供えしたお餅を『御歳魂(おとしだま)』として子どもたちに配ったのが起源なんだよ。もっとも、他にも目上の人が目下の人に贈ることから、『年の賜物→としだま』となったという説など、いろいろあるけどね」などと、長々とその起源について話をすれば、いつの間にかあなたの周囲から子どもたちの姿は消え失せているに違いありません。




五円玉とポチ袋をいつも持ち歩いておく

事前にモノを準備しておくというハードルの高さはありますが、手間ヒマをかけるならこのやり方がもっともスマートです。1で説明したように「五円というのは、御縁につながっていてね」と口走り、さらには「銭洗弁天様という神様がいてね。そこの霊水でお金を洗うと増えると言われているんだ。だから、この“ゴエン”は使っちゃいけないよ」などと、子どもにとってありがたみがあるかどうかわからない豆知識を披露すれば、翌年からあなたにお年玉をせびろうとする子どもは激減するでしょう。もっとも、「今年も“ゴエン”をいただきに参りました」という、やたら大人びた子どもがいる可能性は否定できないので、一度この方法に手をつけてしまったら、毎年同じものを用意しなければならなくなってしまいますが。




「いやあ、松も明けちゃったからなあ」

ここでいう「松」とは「松の内」という一般的に正月期間を指すのは、みなさんもご存じでしょう。お正月の「松飾り」を飾っておく期間、つまり「神様をお迎えする期間が過ぎてしまったので、あげたいけどあげられない」と、日本の風習も交えて教えてあげましょう。ただし、本来「松の内」とは小正月である15日までを指します。博識の子どもに指摘されてもあわてぬよう、「最近では、7日までを指すのが“通例”なんだよ」などと子どもにとって耳慣れない言葉を用意しておくのも大人のビジネスマンとしては必要な素養です。




「今年の分はもう締め切っちゃったんだよね」

「こんなときだけ神様を頼りにするのはちょっと……」という自己責任感あふれる向きには、「今年はもう終了」と逆らいようのないルールが世の中には存在すると子どもに教えましょう。ただし、最近の子どもはしっかりしているので、「じゃあ、来年の分の予約、よろしくね」などと美しく切り返されてしまう可能性も少なからずあるので、きっちりと「来年の分の受付開始はまだ決まっていない」と伝えておきましょう。子ども世界のルールで、世の中が回っているわけではないということを、次世代に伝えるいい機会だと考えれば、それほど気に病むことはありません。




「とりあえず、一緒に家まで行こう」

子どもにおカネをあげるということを軽々しく考えてはいけません。おカネの扱い方というのは、子どもにとって将来設計にもつながる大切なもの。お年玉とはいえ保護者の同意なしにあげることは、けっして許されないことです。子どもに対して「家まで送る」と言い張ればたいていの子どもは、その時点であきらめてくれるはず。万が一家まで行くことになっても「お年玉をあげることも考えたのですが、ご家庭の教育方針もおありでしょうから、遠慮させていただこうかと」と保護者の方に相談をする体を取れば、ほぼ問題なくお年玉を回避できるでしょう。最後に「遠慮させていただく」と添えることをお忘れなく。




×NG――Out of Ranking 「いやー、今日は持ち合わせがなくて」

大人のビジネスマンの世界では、こうした建前も通用しますが、わざわざお年玉をせびるような子どもに対してこうした建前は一切通用しません。「じゃあ、いつならあるの?」、「給料日は?」、「っていうか、いくらくれるの?」などと追い込みをかけられ、いつの間にかお年玉をあげることが既定路線になってしまいかねません。くれぐれも、その場しのぎの思いつきを口走らないよう、気をつけたいところです。


イラストレーション:●日辻彩(Aya Hitsuji)


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